リアルタイムアタック(RTA)のオフラインイベントといえば、海外の”Summer Games Done Quick(SGDQ)”や”Awesome Games Done Quick(AGDQ)”などが有名で、毎年何十万人もの視聴者を生み出す一大イベントです。

では、その日本版とも言える大型オフラインイベント”RTA in Japan” が昨年末に開催されたのはご存知でしょうか。第一回にもかかわらず、何千人という日本のRTAファンたちが見守った一大イベントとなりました。

そして今年8月11日(金)~14日(月)、RTA in Japanを主催したmokaさん(@moka_peer)の手により、今度はRTAオンラインイベント”RTA in Japan Online”が開催される予定です。全国1000万人のやり込みゲーマーの皆様、RTAのお祭りが半年ぶりに開催されますよ!

 

今回筆者はmokaさんにインタビューを行い、自身のRTAの経験やゲームイベントの必要性、RTA in Japanの思い出を語っていただきました。

 

mokaさんとRTA

--mokaさんといえばやはりRTA in Japanのことについてお聞きしたいのですが、先にmokaさん自身のことについてお話を聞かせてください。
mokaさんも何かのタイトルでRTAをされたことはありますか?

はい。かなりの本数やってます。特にRPGのタイトルが多いんですけど、ヴァルキリープロファイルやアンリミテッド:サガなどはかなりやり込みました。

海外のRTAランキングサイト”speedrun.com”でmokaさんの名前を検索すると、様々なゲームタイトルで1位になっていることがわかります。
※画像はspeedrun.comより

 

--アンリミテッド:サガですか。ネットではあまり評判のよくないゲームだったと思いますが・・・

100円で投げ売られてたこともありましたね(笑)。でもあのゲームはシステムが複雑すぎるだけで一度理解してしまえば相当面白いゲームなんです。私はのめり込んで5年くらいずっとアンサガばかりやってた時代があります(笑)。

 

--5年も!?そこまで一本のゲームをやり込めるのはすごいですね。子供の頃から1本のゲームを集中的にやり込んでいたのでしょうか?

そうですね。「ゲームは1日1時間まで制度」があったので、攻略本を先に読み込んでは1時間でどれだけ進めることができるか といったことをしてました。もしかしたらそれが今のRTA好きにつながったのかもしれません。

 

--本格的にゲームのやり込みに取り組まれたのはいつ頃からですか?

小学校のころからですので、十数年以上前からやっています。2000年の初頭に”ファミ通WaveDVD”という雑誌にやり込みビデオを投稿するというコーナーがありまして、その当時はタイムアタックに関する情報がたくさん載っていました。それを見て自分もやってみようと。

当時は今でいう現実時間で早さを競うもの(RTA)ではなく、ゲーム内時間でのクリアタイムを競うのが主流でした。

 

--当時からタイムアタックは人気のある遊び方だったのでしょうか?

投稿数を鑑みるにかなり人気はあったとは思いますが、近年ほどではないと思います。当時はVHSを雑誌編集部に投稿しなくてはいけなかったため、労力と費用が今では比べられないくらいかかりました。それが2000年前半まで続いたのですが、後半になるとタイムアタックの詳細なプレイレポートをネット上の某サイトに投稿し、それを他のサイト利用者に審議してもらうという手法が主流になりました。
今では自分でプレイ動画を撮影して動画サイトに投稿するとか、生放送で録画を残したりできるようになったので、投稿の敷居は格段に下がりましたね。

※タイムアタックの歴史についてはmokaさんのサークルが作成された”RTAの歴史”か、”RTA PLAY!”に詳しく載っていますので、興味のある方は是非とも読んでください。

 

RTA in Japanについて

--RTA in Japanについてお聞きします。やろうと思ったきっかけはなんでしたか?

私はGDQを2010年頃の発足当時から見ていました。当時のこじんまりとした会場からはじまり、今ではホテル全体を貸し切って行うほどの成長ぶりを目の当たりにしてきたわけです。そうやって海外ではどんどん大きく成長しているのにもかかわらず日本では何も起きていないという現状に焦りを感じていました。

SGDQ2011の会場の様子。今でこそホテルの大きなイベント会場で行なっていますが、発足当時は誰かの家に集まってやる程度の小さいイベントだったそうです。
※画像はSGDQ 2011 Highlights – Awkward, Funny and Best Moments (unofficial)より

 

--加えて言うなら日本はRTA先進国ですよね。動画サイトでも何十万再生という動画がたくさんありますし、RTAの記録サイト”speedrun.com”を見れば多くの日本人の走者がランキング1位を取っています。

そうですね。走者(RTAプレイヤー)はたくさんいるはずなのにGDQのようなオフラインイベントが開かれていないのがとても残念でした。しかしそれには理由があることがわかりました。RTA全体を総合的にまとめ上げるサイトがないということです。少し前の日本はゲームタイトルごとにコミュニティを作り上げてしまって、他との交流がほとんどない状態でした。RTAのオフラインイベントはあったりもしたのですが、結局単一のコミュニティの中だけでとどまってしまい、GDQのようなRTAプレイヤー全体を巻き込むイベントは実施が困難でした。

 

--speedrun.comのようなサイトがなかったと?

そうです。そういった状況を打破しようと私は”RTA PLAY!”という初心者情報サイトを立ち上げました。どんなゲームのRTAをやるにしても、まずは動画撮影やストップウォッチなどの環境を整えなければなりません。これからはじめる初心者のためにタイトルを問わず利用できるサイトがRTA PLAY!です。このサイトは二年ほど前に立ち上げましたが、今では走者のほとんどが知っているサイトになりました。そして「そろそろ時期だな・・・」と見計らってRTA in Japanの告知をしたわけです。

 

--なるほど!第一回にもかかわらずあそこまで人気があった理由がわかりました!ゲームコミュニティを選ばないRTA PLAY!の利便性が功を奏したわけですね。

はい、おかげさまで参加希望者は100名を超えるほど多くの人に認知してもらうことができました。

 

--ではRTA in Japanの感想をお聞きします。先にちょっといやらしい話をお伺いしますが、全国から参加者が集まったということは会場費や交通費はどうされたのですか?

交通費は全て自費で会場代は参加者約50名と折半しました。ただ驚いたのが、非常に熱意をもった参加者が多くいたことです。中には沖縄からでも参加したいという方もいました。

海外のGDQなどはおそらく全てがチャリティーイベントです。毎回多額の寄付金が入りますが、それらのほとんどはどこかの慈善事業団体に寄付されます。企業からのスポンサー料ですらも。その考えは素晴らしいと思うので今後のRTA in Japanもできるならそういう形にしたいと考えています。もしくはプラマイ0程度の収益になるようにします。前回が赤字だったので・・・。このイベントを通して必要以上のお金を儲けることは考えません。

 

--やはりそこは悩みのタネになる部分ですね。ではイベントの感想をお聞きします。大変でした?

むちゃくちゃ大変でした。3日間で10時間しか寝れませんでした(笑)。運営も私含めた5人で回さなければならず、ほとんど何かを考えている時間はなかったです。でも楽しかったことはよく覚えています。あとはイベントが終わった後にたくさんの人が見ていてくれたことに気づき、達成感を得られました。

 

--私もリアルタイムで見ていましたが、本当に楽しい時間でした。特にSFCタイトル”ドンキーコング2”の走者のふぃすさん(@fis314)が、ドンキーのコスプレしてプレイしている最中におもむろにバナナを取り出しムシャムシャ食べてたのが衝撃でした(笑)。「この猿(人)なにやってんだろう・・・?」って(笑)。

あーあれ事前に打ち合わせしてたんですよ(笑)。開催前にふぃすさんから深刻そうな物言いでチャットが飛んできまして、「当日ドンキーのコスプレしたいんですがよろしいでしょうか・・・?」って(笑)。

ああいった自発的な行動はRTAイベントの趣旨をわかってくれていたと思います。というのもGDQはオリンピックのようにただ最速を目指す競技的なイベントだと思われがちですが、そうではないのです。確かに参加者にはできるだけ早いタイムを目指して走ってもらってはいますが、最優先事項はイベントを楽しんでもらうことなのです。これはとてもアメリカ的な考えだと思いますが、私もこの考えを大切にし、RTA in Japanにも踏襲したいと思います。

 

--GDQでも走り終わった後に歌を歌い出したりバグ紹介の時間があったりしますね。同好の士とともに楽しい時間を分かち合うというのがオフラインイベントの醍醐味ではないでしょうか。

mokaさんが目標としているRTA in Japanのかたちとはどんなものなのでしょうか?

とりあえずRTAの好きな人たちがモチベーションを上げる場所にしたいと思います。素晴らしい記録を出した人でも、その後なにもないとすぐにゲームを去っていってしまいます。しかしこのようなイベントに参加しようと思うと目標ができますよね。既存のプレイヤーがRTAに長く関わり続けられる場として機能してほしいですね。

 

RTAの魅力とは

--mokaさんが思うRTAの魅力とはなんですか?

RTAが好きな人は二つのタイプに分けられます。一つはスポーツのように少しのミスもなく操作しようとする人で、アクションゲームが好きな人に多いですね。もう一つはクリアチャートを練るのが好きな人です。既存のルートよりも早く攻略できる方法を研究したり、実際にやってみてそれを証明することに情熱を注いでいるタイプの人です。私は後者ですね。

プレイする側としてはそういった楽しみがあるのですが、彼らのプレイを観る側の人間も楽しめるのが魅力だと思います。「なんて精密にプレイできるんだ・・・」とか「そんな方法があったのか!」といった驚きを感じることができます。

 

RTA in Japan Onlineについて

--では最後に、8月11日(金)から開催される”RTA in Japan Online”についてお聞きします。オフラインでやったことをオンライン上で行うイベントということでよろしいでしょうか?

そうですね。参加者が順番に配信していって、それをTwitchのRTA in Japanチャンネルで繋げて配信していきます。参加者は50名ほどで、80時間ぶっ通しで行う予定です。

 

--なぜオンライン上で行うことになったのでしょうか?

やはり東京は遠いといった声があったのと、大規模なオフラインイベントを年に2回行うのは体力的にきつかったからです。オンライン上なら幾分楽だろうと踏んでやってみることにしました。結構軽いノリで開催を決定しましたね。

 

--ひゃ〜大変そうですね。確かにオフラインイベントは会場を用意するだとか、慣れない環境での機材トラブルだとかに悩まされることが多いと思いますが、リアルタイムで配信をつなげていくというのもまた大変そうです。個々の回線速度の問題もあるでしょうし。

回線速度については規定が設けてあります。もし規定より下回る速度であっても、事前に配信を確認して問題がなければ許可しています。予想よりも結構膨大な量の仕事ができてしまいました (笑)。ですがRTA in Japanのスタッフと、それとは別に協力してくれる方が11人もいまして、彼らとともに頑張っていこうと思います。

 

--それならmokaさんの睡眠時間も十分にとれそうですね(笑)。心の底から楽しみにしています。本日はありがとうございました。

 

以上がインタビューの内容です。多くの人が待ち望んだ海外の文化をmokaさんが日本で実現したことで、今後日本のRTAはさらに盛り上がることでしょう。

RTAが好きな方も単にゲームが好きな方も是非とも8月11日(金)20:00から始まるRTA in Japan Onlineの配信を見ましょう!今までにない楽しさが待ち受けているはずです!

 

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